マルエージング鋼

    

弊社はマルエージング鋼の加工経験を多く持っています。マルエージング鋼は強度や靭性に優れ、宇宙航空機器やロケット部品、自動車のエンジン部品、金型など様々な分野で活用されています。難削材としても知られ、精度よく加工するには経験に基づき工具寿命の管理をしっかり行う必要があります。

切削加工
難削材切削加工
難削材切削加工

マルエージング鋼の性質

マルエージング鋼は1959年にThe Intemational Nickel Company(略称INCo) で研究開発された合金です。代表的なマルエージング鋼は鉄にニッケルを18%含んだ合金で、その他にも極定量の炭素やコバルト、モリブデン、ケイ素、チタンなどの元素が含まれています。
マルエージング鋼の特徴は、時効処理とよばれる熱処理を加えると強度が上昇することです。時効処理前のマルエージング鋼は比較的硬度が低く加工性も良好です。これに熱処理(時効処理)を加えるとマルエージング鋼に含まれるコバルトやモリブデン、チタンとニッケルなどの添加元素の効果により材料強度が上昇します。
その他にも、熱処理時による寸法変化の影響が少ないことや衝撃に対する疲労強度が優れているなどの特徴があります。

マルエージング鋼は一種類ではなく、含まれている元素の含有量によってグレードが異なります。例えば、18%のニッケルを含むマルエージング鋼であっても一番グレードの低いマルエージング鋼の0.2%耐力は1350MPaであり、一番グレードの高い0.2%耐力は2350MPaです。コバルトやチタンなどの添加元素の含有量によって機械的特性は変化します。その他にもニッケルを20%、25%含んだものマルエージング鋼もあります。そのため、使用用途に合わせてマルエージング鋼を使い分けが必要不可欠です。

切削加工品
切削加工2

マルエージング鋼の活用事例

マルエージング鋼は優れた特性を有するため、さまざまな場面で活用しています。

例えば、人工衛星の部材や航空機用の構造部材、自動車エンジンの無段変速機用部品、ばね用の材料です。マルエージング鋼は時効処理により高い強度を得られるうえに靭性もあり、高強度の要求される部材に適用されています。
熱処理前のマルエージング鋼は比較的に加工しやすく、熱処理を加えると高強度になる特徴があります。この特徴を活かした活用事例が精密プラスチック金型や精密アルミニウム金型、ダイカストなどです。
マルエージング鋼は熱処理を加えても寸法変化が比較的小さいため、熱処理前に形状加工し、その後に熱処理を加えて硬化させています。高強度であるため長寿命が要求される金型には最適な材料です。また溶接性にも優れており金型の肉盛り補修材料としても利用されています。
その他にもゴルフクラブなど、一部民生品にもマルエージング鋼は使用されています。

マルエージング鋼が難削材である理由

マルエージング鋼は難削材とよばれる材料の中でも比較的加工しやすくダイス鋼と同程度といわれています。また、時効処理前後で加工の難易度が変化する材料です。

ニッケルを18%含むマルエージング鋼は、時効処理をする前の方が切削性は比較的良好です。しかし、高強度であるため切削工具の消耗が激しく切削抵抗も高いです。また、切削熱も発生します。そのため、しっかりとした工具の保持と切削液による冷却が欠かせない材料です。

難削材加工

一方で時効処理後のマルエージング鋼の硬さは約1,5倍増加するため、高強度となり時効処理前に加えて加工性が悪化します。
そのため時効処理後に切削加工を行う場合、マルエージング鋼は強度の増加により加工難易度が上昇する材料です。

このようにマルエージング鋼は時効処理前後で加工の特徴が変化する材料です。そのため、高い精度でマルエージング鋼を加工するには、長年蓄積してきた適切な工具選びや加工条件などのノウハウが欠かせません。

弊社は、グレードの異なるマルエージング鋼の豊富な加工実績があり、マルエージング鋼の切削加工に関して多くの経験と技術を持っています。マルエージング鋼の加工はユニバーサルにお任せください。

特に金属積層材(3Dプリンターで作成した素材)への二次加工での実績が多数あります。